様々なオリジナリティ観。

 現在、コンピュータ将棋選手権のライブラリ制度についていろいろと議論が交わされている。コンピュータ将棋選手権というのは、年に一度開催されるコンピュータ将棋の大会である。そのライブラリ制度というのは、コンピュータ将棋協会が指定したライブラリ(プログラムの部品)だけは既存のものを使ってもよいという制度である。それについてなぜ議論が交わされているのかといえば、数年前に優勝し、今もトップクラスの実力を誇るbonanzaというソフトのソースの全体がライブラリとして公開されたからである。そのことをめぐる複雑な意見が交換されているのだが、あまりにも込み入りすぎていて私には議論がよく理解できていない。でもとにかく、「オリジナリティ」についてのコンピュータ将棋界の認識は面白いなと思ったので、そのことについて本日の日記では書く。議論に参加するわけではない。

 私は、オリジナリティと呼ばれる概念にはいくつかのサブジャンルがあると考えている。

  • 「新機軸型」:全くの新しい発想。
  • 「改良型」:自家用車を見てF1カーを作るようなこと。
  • 「合わせ技型」:組み合わせの妙で今までにない新しいものを作ること。
  • 「自作追試型」:既存のものを自分の手で作ってみること。

 このうち私は、「新機軸型」が最もオリジナリティが高いと思っている。ついで、「改良型」は日本の企業のお家芸であり、「合わせ技型」は大学の研究室でよく見かける風景であり、両者ともオリジナリティを主張できると思っている。一方で、「自作追試型」はオリジナリティの主張ができないと考えていた。

 ところが、議論の現場となっている掲示板を読んでみると、どうやら「自作追試型」も立派にオリジナリティが認められるようである。そのわりに「改良型」である「文殊」や「A級リーグ指し手1号」というプログラムにオリジナリティを認めないという意見も見受けられる。やはり、分野が違うと価値観も異なるのだなと再認識した次第である。

9月4日修正:「自作型」というネーミングを「自作追試型」に改めました。それ以外の箇所は修正していません。