「べ」と「で」と「げ」の違い・その1。

(※非常にマニアックな話です。)
(※また、まだ確証の得られていない話です。)
(※「その2」はいつになるか分かりません。)

 本日の日記は音声の話題である。特に子音の弁別についての話題であり、その中でも表題のとおり日本語の/b/と/d/と/g/の違いの話題であり、さらに母音が/e/のときに限るというマニアックな話題である。これは私が本気で研究しているメインのテーマである。

 表題のとおり、「べ」と「で」と「げ」の違いを明確にすることが私の研究の目標なのだが、すでに研究に着手してから二年半が過ぎた。おそらくそれくらいは何も得られずに過ぎるだろうと覚悟していたが(五年経って何も出てこなかったらこのテーマを諦めようと思っていたくらいの長期計画である)、それでも見えてきたものがある。そして、その見えてきたものこそが、「べ・で・げ」の違いを見つけることの難しさを物語っている。

 私は、この研究目標を設定したとき、無意識に次のような仮設を立てていた。「なんらかのパラメータをいじると連続的に『べ→で→げ』と変化するのだろう」というものである。言い換えれば、この三つの音は直線上に並んでいるのだろうと思っていたのである。それから二年半が経ち、どうやら直線上には並んでいそうにないという感触が得られつつある。

 どういうことかといえば、この三つの音は一つの軸で表されるのではなく、二つ以上の軸で表さなければならないようだということである。

 先日、こういう実験をした(実験サンプルはまだ少ないので覆る可能性は高いが)。「べ」という音から「げ」という音を作る(分析・合成)という実験である。確かに「べ」という音を少し加工すると「げ」に聞こえる音となった。そのとき用いた唯一のパラメータの中間のどこかに「で」があるのではないかと思って探してみたのだが、「で」は聞こえず、「べ」から急に「げ」に切り替わった(途中、どちらにも聞こえる遷移域を経たが遷移域は狭かった)。少なくとも「べ→で→げ」とはなってくれなかった。順番が違うだけかと思い、仮定を「で→べ→げ」としてパラメータを変えたり、「べ→げ→で」としたりしてみたが、どちらでもなかった。つまり、パラメータ一つでは三つの音を表すことができなかった。

 その他の実験でも、どうにも軸を二つ以上考えないとうまくいかないという事例を経験しており、一次元では表せそうにないと感じている。

 テーマ設定のときにはまさか軸が二つあるかもしれないとは想定していなかったので、まだそんなところをうろうろしている段階である。ゆくゆくは、子音全般について解明したいと考えているのだが、まだここである。でも、ここを乗り越えるとかなり視界が開けるのではないかと感じている。