Theoretical investigation on the sensitivity of a microphone using the change in the total reflection of light by sound

 五年くらい前に東京タワーの近くにある機械振興会館という建物で開催された音響に関する研究会で見かけた発表が、今月の論文誌に掲載されたようである。そのとき私は確か修士の学生で、質問はしなかったが発表後の休憩時間に「滅茶苦茶面白かったです」と話しかけに行った憶えがある。ようやくそれが掲載されたのだと懐かしくなり、また、みなさん頑張っているのだなと思ったので、専門からやや外れてはいるが、紹介する。

 日本音響学会に論文本体のPDFが公開されているので、何を語っても著作権的な問題はなかろう。アブストラクトはTheoretical investigation on the sensitivity of a microphone using the change in the total reflection of light by soundここにある。なお、それ以前にTheoretical investigation on a microphone using optical reflection on curved surfaceという論文も書いているらしく、今回はその続きであるようだ。

 これは、大雑把にいえば、マイクロホンの話である。一般に使われているマイクには振動板があり、その振動板が音圧を捉えて、振動板の振動を電気信号に変換することにより音が電気信号となる。この論文では、振動板を使わなくても光でなんとかなるのではないかと書かれている(先行研究もあるようである)。光で音を電気信号に変換するためにはどうすればよいのかという問いに対し、この論文では屈折率の利用という方策をとったようである。一般に、光がガラスなどを通過しようとするとき、屈折率に応じて反射したり透過したりする。この屈折率は空気圧によって小さく変化するらしく、その屈折率の小さな変化を増幅させて音圧を光の反射光の強さとして捉えようとしているらしい。このとき問題となるのはその感度であり、ガラスの形状によっては屈折率の小さな変化を捉えきることができない。この論文は、どうやら、ガラスの形状の工夫がメインテーマのようである。

 今回の論文は(題名に書かれているとおり)まだ理論段階であり、投稿された(約一年前の)時点では実物による検証はなされていないようである。理論上は既存のマイクロホンよりも高い周波数の音まで拾うことができるとのことであり、実際にどうなるのかということに私は興味がある。そんな高い音まで拾うことができても人の耳には聞こえないわけであるが、もしかしたら静かだと感じていた部屋にものすごく大きな音が存在する可能性もある。新しい現象の発見は新しい観測法によってなされる。