サイバー大学に関する雑感。

 サイバー大学という大学がある。これはインターネットの大学の総称ではなく、例えば早稲田大学とか東京大学といった名称と同様に、固有名詞である。私は現在そこで授業補助のアルバイトをしており、結構面白い特質を持った大学だと思ったので雑感を書く。

 私がサイバー大学に来てからの印象は、とにかく学生がよく勉強するというものである。学生は社会人が多く、全体の半分以上を占めているのだが、もしかしたらそのせいかもしれない。おそらく、私の出身校の電気通信大学や、そのほかの多くの有名でない国立大学の学生よりはよほど勉強していると思う。

 ほとんどの授業が「講義」と「演習」の対になっており、単位をそれぞれ同数くらいずつとらなければならない。おおむね、耳と目で理論を習うのが講義であり、手や電卓などで計算をしたりプログラムを書いたり文章を書いて提出したりするのが演習である。もっと簡単にいうと、インプットが講義でアウトプットが演習である。普通の大学よりも、アウトプットが多いと言えるのではないかと思う。その分、学生の負担が増えるのだが(教員も採点の負担が増えるけど)、多くの学生はレポートをきちんと締め切りどおりに提出する。

 このきちんとレポートを提出してくれるというのは、卒業者の学力のある程度の保証にもなっている(特例を除いてまだ卒業者はいないが)。全員がレポートを提出しない場合には単位をあげる際の基準を下げざるを得ないが、ほとんどの人がきちんとしたレポートを提出してくれるので基準を下げなくて済んでいるのである。

 どうも、単に大学の卒業証書がほしいわけではなく、本当に勉強をしに来ている感じである。向学心のある人が多いのだろうと思う。インターネットの大学だというとなんとなく胡散臭いイメージがあるが、ほかの誰でも入れる大学よりはずっと力がつくと思われる。

 誰でも入れると書いたが、入学は無試験である。私もよく知らないのだが、簡単な書類を書けば、学力審査なしに入学が可能であるらしい。

 ただし、授業は孤独である(私も体験的に何回か授業を受けた)。画面の前には物理的には自分一人しかいないのである。物理的には一緒にキャンパスに通う学生もいない。学内専用のSNSもあり、書き込んでいる人や交流している人も結構いるようではあるが、それでもやはり普通の大学を知っていると殺風景であるという印象は否めない。

 創立してからまだ三年目が終わりかけているところであり、これからどんどんシステムや規則を改良していかなければならないところなのではないかと思うが(私はアルバイトなのでよく分からないが)、「大学は勉強をするところ」という昔ながらの考え方が実践できている数少ない大学の一つなのではないかと感じた。物理的なキャンパスのある大学ではなく、インターネット上に「勉強するための大学」があるということが意外だった。

 ところで、詳しくは「サイバー大学」で検索してください。

 なお、この文章も掲載をためらっていたのであるが、とある先生に載せてしまえと背中を押していただいた。感謝する。