学力低下も問題ではあるが。
学力の低下と見なされる状況が観測され、その低下を食い止めるためにはどうしたらいいかという議論がなされているが、本当に目指さなければならないのは、学力の向上だろうと思う。
学力の低下を食い止めるという概念は、みんなにペーパーテスト(およびそれに準ずる何か)で100点をとらせることを目標にしていると思われるが、その考え方では学力の低下は止まらないことと思う。ペーパーテストなどで100%の結果を出すことを最終目的とすると、学生は必ず「何パーセントとれれば合格なのか」と考えてしまう。ここで、90%を合格ラインにしたとし、全員が90%とることに成功したと理想的に仮定しても、学生は教師の力の90%を得たことにしかならない。その学生が高校の教師になり学生を指導すると二世代下の学生は最初の教師の81%の力しか得ることができない。以下、指数関数的に学力は低下していくことになる。
学力を世代間で一定に保つには、当然のことだが、「上の世代よりも優秀な人」と「上の世代よりも劣ってしまった人」を作らなければならない。けれども、現状としては「上の世代よりも優秀な人」を作ることは念頭に置かれていないように思える。これでは、世代間で比べた場合、学力は落ちていく一方である。
(ところで、私事で恐縮だが、私は中学の頃、国語の先生に対して授業中に抜き打ちテストをしていた。授業の流れを遮って「がいせんもん」などと単語を口にし、先生に漢字を書かせるのである*1。書ける漢字もあれば書けない漢字もあった。そのことによって、「先生でも分からないことがある」という当然の事実を再認識していたように思う)
本当に目指すべきなのは、「先生にも分からないことがある」ということを学生に認識させ、「先生を超えること」を目標とさせることなのではないかと思う。目指すべきペーパーテストの点数は、100点ではなく130点である。
*1:その頃「醤油」や「薔薇」といった漢字を憶えるのが流行していた。