オシム監督流「できるけどやったことのないことをさせる教育」

 教育というと「知識を詰め込む」と「野放しにする」の二つの方法論の間を行ったり来たりしている印象がある。我々のような「非ゆとり世代」は前者であり、「ゆとり世代」は後者であろうと思う。結論からいえば、どちらも失敗しているように思われる。そして、サッカーのオシム監督はその「教育」に一石を投じたように私は感じた。

 オシム監督が実行している指導は、簡単にいえば次のようになる。題名どおりで申し訳ないが、「できることをさせる」「やったことのないことをさせる」の二つである。「非ゆとり世代」は教えられたとおりに教えられた問題を解いていた。結果的に判断力が養われなかった。「ゆとり世代」はおそらく学校と塾とのギャップで教えられていない範囲の問題を解かされていたのではなかろうか。結果的に問題が解けるはずがない。

 人間、できないことはやはりできないし、やったことのあることはやはり簡単にできてしまう。それでは人間は成長しない。できるかどうかは分からないけど(やったことはないけど)できそうなことをしてみることで人間は成長する。

 オシム監督の率いるチームは、招集をかけられたその日に海外へと飛び立った。これは「できること」ではあるが「やったことのないこと」である。こういったときに個人の瞬間的な判断力が問われることになる。オシム監督のチームはきっと成長することだろう。