暗記科目としての数学。
カテゴリは「大学」であるが、これは高校の話である。数学といえば、一般に暗記の通用しない科目として捉えられており、才能がものをいう科目であると認識されているようである。それはおそらくほとんど真実だろうと思うが、「暗記不能」「才能次第」と一度認識されてしまうと学習意欲をなくすことも事実である。私の高校時代、一人だけこの暗記不能という限りなく真実に近い事柄を覆してしまった先生がいた。
その先生は定期考査前になると学校指定の問題集に載っている問題の中から半分くらいを選び、「この中から全く同じ問題を五問ほどテスト問題として選ぶので答えを暗記してきてください」と言った。数学のテストを社会科と同じような「暗記物」にしてしまったのである。
考えてみれば、数学の問題でその場でたちどころに解けるようなものは少ない。解ける問題というのはだいたい似たような形式の問題を事前に解いたことがあるものである。似たような形式の問題であると気づくかどうかが応用力なのであって、似た問題を解いたことがなければ応用力を働かせることはほとんどできない。解いたことのない新しい問題を解くには半年かそれ以上は必要であり、それは応用力ではなくほとんど創造力である。