博士課程とはどんなところか。

 小学校と中学校は日本人ならほぼみんな通う。高校も多くの人が入学する。大学もそれなりに多くの人が進学するし、進学しなくてもなんとなくイメージはわくことと思う。今日の日記で採り上げたいのは大学院の話である。大学院というのがいかなるところか、想像できる人はわりと少ない。私も工学部以外の大学院のことはよく分からないのであるが、とりあえず工学部系の大学院のことについて語る。

 小学校は、どれほど成績が悪くても進級できる。中学も定期考査はあるが進級にはあまり関係ない。高校は定期考査での成績が進級に関係してくるが、適度に勉強していれば留年することはない。大学は成績によって容赦なく落とされる(うちの大学は四年間で卒業できる学生が入学者の六割程度である)。しかしながら、落とされるのは真面目に勉強していなかった人がほとんどであり、入学するだけの学力のある学生ならば真面目に勉強していればほぼ単位をとることができる。また、授業をどれだけ理解したかによって大学までの成績はつけられる。つまり、大学まではインプットの能力が問われている。

 大学院の話に入るが、大学院には授業が少ない。大学院は二年間の修士課程と三年間の博士課程に分かれているが、特に博士課程の方には授業はほとんどない。また、授業内容は高度ではあるが、単位は比較的簡単にくれる。では、どこで卒業の合否を決定するのかといえば、研究成果である*1。大学院の学生は、授業の時間以外は研究をしている(はずである)。大学院ではアウトプットの能力が問われる。

 修士課程の修了(卒業)条件は大学院によって様々であるが、工学系の場合どこかの学会で口頭発表をしていることが条件となる場合が多いと思われる。国内の学会での口頭発表は審査がないことがほとんどなので、やろうと思えば誰でもできる。つまり、ほぼ誰でも卒業できる。なお、修士課程は大学入試よりも入学が簡単であるので(文系はそうでもないらしい)、要するに、大学に入った人なら修士号をとることができる。

 博士課程の修了条件も大学院によって様々であるが、工学系の場合はだいたい二本くらいの論文を論文誌に載せることが条件となる場合が多い。また、国際学会の口頭発表(こちらは審査があることが多い)への発表義務がある場合も多い(当然英語で喋る)。国際学会の口頭発表はだいたいそれほど苦労なしに審査を通ることができるが、論文誌に論文を載せるのが難しく、博士号がとれない人や留年する人はだいたいここでつまずいている。基本的に、研究成果を論文にまとめて学会に投稿して審査をしてもらう。投稿先が学会であるので自分がどの大学院に所属していようと同じように扱われる。また、審査の土俵には「学生用」などといったものはなく、現役の研究者たちと同じ土俵で戦うことになる。要するに、修士課程とのギャップが激しい。博士課程に入学するのは難しいことではないが、出るのは相当難しい。

*1:研究についてはこちらで語ったhttp://d.hatena.ne.jp/tihara/20060531#p1