"ベイジアンモデル選択に基づく知覚特徴量を用いた抽象的語意の学習"

 言語獲得について研究している人の予稿である。どうしたら機械が自動的に言語を憶えていってくれるかという壮大なテーマに挑戦し続けている人の書いたものである。著作権がどうなっているのかは知らないが、こちらにアップロードされている。http://www.slc.atr.jp/~niwaha/Publication/0603-PRMU.pdf

 この予稿には、抽象概念をいかにそれらしく機械に憶えさせるかということが書かれている。例えば、「リンゴ」や「鍵」といったものが具体的であるのに対し、「食べ物」や「道具」といった概念が抽象的であるとしている。そして、これらの「食べ物」「道具」といった概念を「動作」と結びつけることによって抽象概念を機械に獲得させたとしている。例えば、「食べる→食べ物」「使う→道具」といった具合である(実際の実験はもっと原始的なものであるがおこなっていることはこれに等しい)。人間と機械とのインタラクションの中で言語を学ばせるというのが著作者のテーマである。

 抽象概念と動作(機能)を結びつけるべきなのではないかという仮説は以前から存在していたが、パターン認識や概念辞書に携わる人々はひたすらツリー構造を作ることによって抽象概念を表そうとしていたように思う。例えば、「食べ物グループ」には「リンゴ・ミカン・パセリ」などがあるといった具合である。半自動化するなど多少の工夫はあるだろうが、基本的にはグループ内の要素を列挙しようとしていた。しかしながら、この予稿はその方法論に対して新たな選択肢を提示している。先駆的な研究である。

 少々難解なので途中で読む気がしなくなるだろうが、重要な部分は後半に集中している。そこまで我慢してぜひ読んでもらいたい。