自分のやっていることの社会的認知度を無視した科学者。

 先日、情報処理学会の全国大会に行ってきた*1。大会というのは普段様々な小規模の研究会で活動している人々が一堂に会して発表をするお祭りである。ただし、普段の研究会よりも内容のレベルが低く閑散としていることが多い。

 その大会で私もレベルの低い発表をさせていただいた。内容は「いろいろなブログの記事を寄せ集めて引用して週刊誌っぽいブログを作ってみたらそこそこ反応が集まったので紹介します」というものである。詳細はこちらである(http://recognition.web.fc2.com/trend/)。今回は、私たちの試みがネット社会にどのように捉えられたかということを軸に発表を進めた。そして、最後に「珍しさと便利さと不快感をネット社会にわずかに与えたようだ」「文章要約という技術はあまり認知されていないようだ」とまとめた*2

 そして、問題は発表後の質疑応答である。コメントが一つだけしか来ず、また、そのコメントの内容に私はがっかりした。「文章要約の技術はたくさん論文が出回っていますよ」と言われたのである。私が「世間には認知されていませんよ」と言うと、「ああ、一般人に、か」と興味なさそうにコメントを打ち切った。残念な反応だった。これはつまり、そのコメントをした人は自分たちの技術が一般にどう受け止められているのかということに関心がないということである。社会にどう貢献するかとか、それが何に役に立つのかなどという答えの出づらいことを問題にしているわけではない。単に社会的認知度についての話をしているだけである。それにすら関心がないというのは危険な状況ではなかろうか。

 私の専門は自然言語処理ではなく音声認識であるが、音声の分野の人は社会的認知度をかなり気にしている。自分の分野のことを社会にアピールするのは、科学者の責務の一部だと私は思っている。もちろん、研究を進めていくことも重要であるが、世間との交流を遮断してしまうことだけは避けなければならない。

*1:カテゴリは「所属学会」であるが、私はこの学会には所属していない。

*2:ほかに発表することがないからそういう発表になってしまうというところからもレベルの低さがうかがえる。