人の進路にアドバイスをしたら怒られた。

昔は「博士後期に進む=死亡フラグ」じゃない時期があったんですか?

http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20071027/1193520052

 という問いに対して、そろそろ博士号をとりそうな私が僭越ながら見解を述べようと思う。ただ、一般的には大学院がそもそもいかなるところかということが知られていないと思うので、そこから簡単に書く(はてなユーザはなぜかこのあたりに詳しいのだが、大学院進学を全く視野に入れなかった人にとっては大学院の存在そのものが知られていない)。小学校は六年間あり、中学校は三年間あり、高校も三年間あり、大学は四年間あり、そしてその上に大学院というものがある。大学院は大抵の場合、修士課程二年間と博士課程三年間に分かれている(修士の次が博士)。今問題になっているのは、この三年間の博士課程に進むとかえって就職先が狭まるという話である。なお「修士課程」を「博士前期課程」と呼び、「博士課程」を「博士後期課程」と呼ぶ場合がある。

 そして問いに答えるが、「昔は「博士後期に進む=死亡フラグ」じゃない時期があったんですか?」という疑問文はナンセンスであると思う。「昔は」ではなく「場所によっては」の方が適切だろう。時間ではなく、空間の問題である。

 私が学部生だったのは七年ほど前である。そのときからすでに博士課程に進んだ先輩の苦悩を知っていたし、博士課程に進んでも半分は学位を取得することすらできずに退学していくということも知っていた。博士に進学したのは三年半前だが、進学しようと思い立ったときに同じ大学のほかの研究室の修士からは、やめた方がいいよ、と言われた。つまり、私の身の回りでは博士課程に進学してもあまり未来はないということは分かっていた。

 ただし、これは数ヶ月前の話なのだが、とある研究室に訪問した際に修士一年生から博士課程進学について軽い口調で相談され、「やめておいた方がいい」と即答し、「大学の先生になりたいんですけど」と言われたので、「お勧めしない」と答えたところ、その話を聞いていたその研究室の先生から「余計なことは吹き込まないでくれ」と怒られた(なお、その研究室の特定は不可能である)。先生はできれば博士課程に進学してほしいらしく、また、その修士一年は博士課程に対してほとんど情報を持っていないということである。つまり、その修士一年にとっては、数ヶ月前の段階ですら、「博士後期に進む=死亡フラグ」ではなかったということである。

 要するに、博士後期に未来がないというのは、「今もって」常識化されていないということである。ちなみに、こんなことを書いている私にすら、それが本当に常識であるのかどうかは分からない。