ゾウがゾウの絵を描くときの描き方と、輪郭。

 年末の「徹子の部屋」に絵を描くゾウのVTRが出てきた。もしかしたら有名な話なのかもしれないが、絵を描くゾウを見たのが初めてだったので驚いた。鼻先にペンを持ち紙にゾウの絵を描いていく。youtubeにも動画があったので貼り付けておく。

 面白いと思ったのは、このゾウの絵が人間の絵の描き方にそっくりだったからである。人は絵を描くとき、なぜだか知らないが輪郭から描いていく。塗りつぶすべき内側から描いていく人はまずおらず、ほとんどの人が輪郭から描く。動画を見てもらえれば分かるが、このゾウも輪郭を描いている。

 画像処理を少しでもかじったことのある人なら分かると思うが、写真から自動的に輪郭だけを抽出するのは難しい。以前このブログでもやったことがあるが、単純な処理だと下の図のようになる。下の図の何が問題なのかといえば、猫と車のボンネットの区別がついていないところである。輪郭の候補をとり出すことはできても、輪郭のクラスタリングは結構な高次の作業なのである。

 人間の目は微分できるらしい、つまり輪郭を抽出するのに適しているらしいということは分かっている。でも、微分したあとにどうしているのかということは分かっていなかったのではないかと思う(このあたりの研究を追いかけているわけではないので、最先端のことは知らない)。なぜ幼稚園児でも「おかあさんのりんかく」を描くことができるのか、私には疑問だった。

 そういう疑問を持ちつつ生活していたところに、ゾウの絵が現れたのである。これには驚いた。ゾウも輪郭を描くことができるのである。たとえあの絵の描き方を人間が教えていたとしても、ゾウ自体に輪郭の把握能力がなければあの絵は描けまい。

 実は輪郭というのは私が考えている以上に簡単なロジックでクラスタリングできるのではないかと思った次第である。私の専門の音声にも「輪郭」にあたる概念はあるので、とても気になるところである。

 なお、見る人によってはむしろ、ゾウが輪郭を描いたことよりも、ゾウが「地面」を描いたことに驚く人もいるかもしれない。