とても易しい音声認識の紹介書。

 これまでにも色々と音声工学関連の本を紹介してきたが、おそらくこれが最も易しい。

人と対話するコンピュータを創っています  音声認識の最前線

人と対話するコンピュータを創っています 音声認識の最前線

 著者の古井先生は音声工学に携わる日本人ならば知らない人はいないほどの高名な研究者で、本の帯に「音声認識研究の第一人者」とあるがそれは誇張表現ではない。古井先生は難しい本も出しているのだが、これは難易度としてはものすごく容易で、分かりやすさからいえばブルーバックスと同程度だと思う。数式はほとんど出てこない。その反面、というか当然のことながら、読んでも何かができるというわけではない。そのあたりが入門書や専門書とは違うところである。内容的な信頼性はかなり高い。

 この本は、数学が苦手だけれど音声認識の中身に興味のある人や、音声認識の中身をよく知らないにもかかわらず音声認識システムを売る営業をしなければならなくなった人や、情報工学の本を何か読んでみたいけど何を読んだらいいのかが分からない人などにうってつけである。もちろん、他分野の理工書を読み慣れている人にも、音声認識について手っ取り早く知るための本としてちょうどいいと思う。唯一の難点は値段だろうか。一般の人に買ってもらうには少々高い気がする。とはいえ、1800円の価値はある。