聞き取りやすい英語への音声変換手法。

 日本音響学会の春季研究発表会(全国大会)に行ってきた。一日目のみの見学である。十件の口頭発表と五件のポスター発表を見てきたが、その中で最も印象に残っている発表を紹介する。なお、筆頭著者にはブログに書く旨を伝えてある。

 題名は「聞き取りやすい英語への音声変換手法」というものである。この発表は実現させたい技術の方向性が面白かった。題名からは、日本人の英語の発音を矯正しようといったよくある趣旨の研究に誤解してしまいそうだが、全く違う。流暢な英語の発音は日本人にとって聞きとりづらいから、それを日本人にとって聞きとりやすい発音に変えてしまおう、というのがこの研究の目的である。ネイティブイングリッシュをジャパニーズイングリッシュに変えてしまおうというのが狙いなのだ。日本人にとってネイティブイングリッシュは流暢すぎるのである。

 この研究目的の面白いところは、技術的な不安が少ないということである。例えば、音声認識には「誤認識」が必ず発生する。でも、この研究は元の流暢な音声を加工するだけなので、誤りが発生しづらく、また誤ったとしてもユーザが修正することができる。

 ただし、この発表には難点もあった。研究目的は面白かったのだが、それを実現するための技術的な完成度が低いのである。残念ながら、この研究グループの技術力不足であろうと思う。でも、技術力があればこの研究は産業的に大きな成果を残すことができることだろう。この研究目的が日本中に広まったらきっと面白いことになる。