ほぼ見ているだけで将棋の大局観が身につく方法。

 将棋の話をしようと思うのですが、私はもっぱら観戦するのみで自分では指さない人です。多分、自分で指そうとすると、かなり悲惨な盤面になるのではないかと思います。そんな私でも、観戦だけは楽しむことができます。いつもプロ棋士たちの対局を楽しんでいます。

 まず、どこで対局を見ているかというと、全てネットです。将棋の主なタイトル戦は7つあるのですが、名人戦を除く6つは無料で見られます。いつ、どのアドレスでネット中継が開かれているかという情報は、将棋連盟のページにも書かれているはずですが(私は見ていません)、私がよく参考にしているのは、ブロガー棋士たちのエントリです。とりわけ、遠山四段のブログにはそういった情報がよくまとまっています。

 で、つい先日、罪山さんが羽生三冠vs久保二冠の秀逸な解説を書いていましたが、あのレベルで観戦を楽しむのは意外と誰でもできるようになります(ただしあのレベルの解説が書けるようにはなりません。観戦記は特殊技能です)。

 ぶっちゃけ、観戦には「読み」は必要ありません。読むのは対局しているプロ棋士に任せておけばいいのです。大事な局面では、観戦記者がリアルタイムで解説文を書いてくれます。観戦に必要なのは、大局観です。大局観というのは極端に簡単にいってしまえば、現時点でどちらが優勢かを直感的に感じとる能力です。

 さて、本題の大局観を身につける方法なのですが、以下の5つのコンテンツやツールを気の向くままに組み合わせればいいだけです。早ければ1ヶ月程度で身につくと思います。

1.ハム将棋
 FLASHでAIと対局することができます。これは大局観を養うためというよりは、大局観がどれくらい身についたかを測るために使います。負けすぎるとやる気を失うので、ちょっとずつ使いましょう。平手で1回でも勝てれば、観戦には充分だと思います。ちなみに、私は最初は飛車と角と歩だけのAIに負けていたのですが、下の方法でいつの間にか平手で五分五分になれました。

2.ニコニコ動画の将棋実況
 ニコニコ動画に「将棋実況」というジャンルがあります。ネットで将棋を指しながら、自分が考えていることをひたすら喋るという動画です。プロ棋士が動画を作っているわけではないのですが、何をどう考えて駒を動かしたらいいのかが分からない人にとっては、「将棋実況」で充分です。将棋指したちの頭の中がのぞけます。「将棋実況」は初期のものの方が面白いです。

 私が参考になると思っている実況者は「なまかく」さんと「ブレスマン」さんです。とりあえず、2人の動画を貼っておきます。本当は「升夫」という方の動画も紹介したかったのですが、消えていました。

↓なまかくさんの実況
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↓なまかくさんの感想戦
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↓ブレスマンさんの実況
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3.「ご主人様、王手です。」
 題名からは想像がつきませんが、将棋連盟が作った公式動画です。これはBIGLOBEの動画サイトに上がっています(今確認してみたら消えていました。ニコニコ動画にも一部アップされているようですが観戦に必要なところが抜けています)。メイドに扮した3人の女性たちに将棋を教えて、半年で3級をとらせてしまおうという企画です。動画の数が多いのですが、講師が将棋を教えている回とひたすらメイドさんたちの勉強風景を映しているだけの回があり、講師が出ている回はさほど多くないのでそこだけを見ればよいです。

 世の中の将棋の入門書は序盤→中盤→終盤という順番で書かれていますが、この企画ではまず終盤の「玉の詰ませ方」から教えます。ルールを憶えたてのメイドたちに金銀飛角でひたすら玉を追いかけさせるゲームをするんですね。将棋というのはシンプルに玉を詰ますゲームなのだと分かります。

4.どうぶつしょうぎ
 3×4のミニチュア将棋です。これは見ているだけとはいかず、自分で指さねばならないのですが(相手も見つけなければならない)、5分程度で1局が終わるので疲れません。このゲームのいいところは、駒を1枚でも多く持っていると有利だということが実感できるところです。

 1500円で駒と盤が売られていますが、ルールは公開されているので、紙と鉛筆で自作してもいいと思います。

5.KIDS55
 電気通信大学の伊藤研究室が作ったコンピュータ将棋です。大きさは、5×5です。これはどういうコンピュータ将棋かというと、「先を読まずに」「大局観だけで指す」という理念に基づいて作られたプログラムです。よって、弱いです。それがなぜ自分の大局観の形成に役に立つのかというと、自分の大局観をどんどんコンピュータに入力できるからです。そして、コンピュータは入力されたデータにしたがって、勝手に指してくれるのです。データを入れたら勝手に指してくれるので、非常に楽です。しかもなぜか、見ているだけで「いい手」とか「悪い手」とかがだんだん分かるようになってくるのです(自分の分身が指しているようなものだからでしょうか)。このプログラムを一番最後にもってきましたが、大局観の形成には一番役に立ちました。プログラミングの知識がなくてももちろんいじれます。

番外編:あまり将棋観戦の役に立たなかったコンテンツ
 そんなものを書いてしまうのは心苦しいのですが、書いてしまいます。
 まず、将棋の本。様々な種類のものがありますが、ある程度指し方が分かっていないと読みこなせません。私もこの罠に引っかかり、挫折しました。入門書の中には理解しやすい本もあるかもしれませんが、戦法名の書かれた本は初心者には読めません。また、初心者のための将棋観戦用の本はないのではないかと思います。
 そして、棋士の講演。私は羽生三冠(当時のタイトル保持数は分かりませんが)の話を2004年に聴いているのですが(認知科学学会の特別講演です)、将棋観戦を始めるには至りませんでした。話自体は面白く、将棋の具体的な局面もたくさん出てきたのですが、それっきりでした。
 最後に、テレビの将棋講座。これも将棋の本と同じで、ある程度指し方が分かっていないと楽しめないと思います。