電子・情報・機械系の学科の授業の半分。

 四月からゆとり世代も大学二年生になる。大学二年生になると、一年生の頃よりもさらに授業が分からなくなるはずである。小学生になって初めて勉強をし、中学生になって定期テストに悩まされるようになり、高校生になって授業内容に追いつくのが精一杯になる。それぞれの学校に進学するに当たってハードルがあり、そのハードルを越えられた人もいれば超えられなかった人もいるはずである。当然のことながら大学の授業も高校に比べて飛躍的に難しくなる。今日の日記では、電子・情報・機械系の学科における半分くらいの授業が「何を」教えているのかということを語る。

 数学には関数という考え方がある。y=f(x)のように、xに何かの操作fをするとyになるという考え方である。この考え方をもとにして中学校の先生が問題を作るとしたら、以下の三パターンが考えられる。

  1. y=axという式にa=2,x=3を代入してyを求めよ。
  2. y=axという式にy=6,x=3を代入してaを求めよ。
  3. y=axという式にy=6,a=2を代入してxを求めよ。

 このように、基本的にはyとf()とxのいずれかを求める問題しか作れない。実は、上記三学科の半分くらいの講義は、この応用問題を扱っているにすぎない。ただし、とても高度な応用問題である。

 高校の物理の問題を例にして、考えてみよう。現行の指導要領は知らないが、物理の比較的基礎として、斜方投射を習っているはずである。斜めに投げたボールがどこに落下するかを問うたりする単元である。この斜方投射を関数の考え方に当てはめると、例えば、初速がxになり、飛び方がf()になり、落下地点がyになったりするはずである。あるいは、投射角がxになり、飛び方がf()になり、落下速度がyになるかもしれない。いずれにせよ、y=f(x)という形式で表すことができる。そして、x、f()、yのうち一つが隠され、その隠された部分を推測するという問題が定期考査では出るはずである。

 この考え方を一般化すると、「入力,x」「関数,f()」「出力,y」のうちどれかが隠され、その隠された部分を解き明かす問題が出る、ということになる。この「入力」「関数」「出力」という考え方は、今の工業の半分くらいを支えている。

 大学二年生くらいになると、「電気回路」「システム制御」など、各学科に鬼門とされる必修授業が出てくるはずである。なぜそれらが「鬼門」となってしまうのかといえば、「何をやっているのか分からない」からである。「鬼門」の科目は何をやっているのか。簡単にいえば、y=f(x)をやっていることが多い。ただし、ものすごくそれと分かりづらくy=f(x)をやっている。そういうときには、授業の中で出てきた言葉の中でどれが「入力」に相当し、どれが「関数」に相当し、どれが「出力」に相当するのかを推測するといい。おぼろげながら、その科目で何をやろうとしているのかがつかめてくることと思う。

 例えば、電子工学科で(学年は分からないが、そして授業名は異なるかもしれないが)必修のはずの「電気回路」では、「交流電源が回路を通過すると振幅と位相が変わる」といったことを最初に学ぶはずである。電源が入力であり、回路が関数であり、振幅と位相が出力である。その後、授業では、難しい回路を簡単に表す方法や(関数を別の関数に直すということ)、交流用の回路に直流を入力したときの出力の時間変化の求め方(入力の質がまるで変わったら出力はどうなるのかということ)などを扱うようになる。ここで、y=f(x)といった考え方が頭に入っていないと相当混乱することになる。何をとっかかりにして授業を聞けばよいのかが分からなくなるからである。混乱したことのある先輩などに聞くと、どれほど混乱するかが分かることだろう。

 要するに、電気・情報・機械系の学科の科目では、まず「入力」「関数」「出力」の考え方に当てはめることができるかどうかを考えるとよい。半分くらいの科目は当てはまるはずである。ただし、残りの半分は無理に当てはめると逆に混乱することとなる。