学部四年生の四月。

 学部四年生のときに自分が何をやったのかということを忘れそうなので書きとめておこうと思う。これから何回かに渡って書く。ただし、ほかの人に迷惑がかかるといけないので、先輩や後輩や同級生のことについては書かない。

 私は音声と画像とロボットを扱っている研究室に入った。その研究室に配属が決まってから最初にやらされたのは、C言語の簡単な課題だった。A4の用紙一枚にごく普通の大きさの字で課題が印刷されていた。だいたい、こんな感じだったように記憶している。

  • 指定した音声の波形をプロットせよ。
  • フレームごとに自己相関関数を計算してピッチ周波数を計算してプロットせよ。
  • フレームごとにゼロ交差回数を計算してプロットせよ。

 指定された音声は「勢い」という単語だったと記憶している。ディレクトリとファイル名が示されていた。また、自己相関関数の問題はほとんどヒントがなかったように記憶しているが、ゼロ交差回数については多少の説明が書かれていたと思う。

 この課題が出されたのが確か、学部三年生の後期の期末試験が終わった頃だったと思う。四月に入ってから先生にレポートを提出した。答え合わせのようなものは特になかった。レポートの提出が最初のゼミで、ゼミは週に一回あった。四月の間は教授の音声についての話を聞くだけで、こんなにも暇でいいのかと思った憶えがある。宿題のようなものも出たことは出たが、例えば「DPマッチングを説明せよ」のような簡単なものだった。研究室で何かをすることはなかった。

 あまりにも暇そうにしている私を見ていた先輩が、私に大学院の講義に出てみるように進めてくださった。「ファジィ工学特論」という講義を私は選んだ。一定数までなら、学部のときに受けても大学院進学後の単位として認定される制度があった。

 また、研究室をうろうろとしていたら、別の先輩が「音声認識の基礎」という本を研究室の棚から選んでくださった。よい本である。

音声認識の基礎 (上)

音声認識の基礎 (上)

音声認識の基礎 (下)

音声認識の基礎 (下)