計算量とグラフ理論に関する本。

コンピュータサイエンスの分野には、NP困難という計算量に関する用語がある。本日の日記では詳しく書かないが(そもそも私は計算量にまつわる話が苦手なので詳しく書けない)、数学のとても難しい問題である。過去、フェルマーの最終定理が解けたり、ポアン…

モンテカルロの失敗談。

まだ懲りずに音声の研究の合間にコンピュータ将棋について考えている。一応、時間制御の部分と千日手の部分と棋譜の生成の部分を除けば、55将棋は動く。動くというだけでものすごく弱いのだが(55将棋だというのに5手先までしか読めない。反復深化をし…

「ロボカップ日本優勝・家庭用ロボット部門」に関して。

簡単に書く。いつものような論考みたいなものとしてではなく、ニュース代わりとして読んでほしい。 http://scienceportal.jp/news/daily/0808/0808061.htmlに書かれているとおり、ロボカップで日本チームが優勝したそうである。14チーム中1位だそうである。…

ギークな人たちに対抗して言語な人たちもけまらしく集まってみた。

関東日本語談話会という歴史のある学会が学習院女子大学で開かれ、そこに言語系はてなーたちが多く集まるという情報をid:nosemさんから聞きつけたので、参加してきた。なるほど確かに、たくさんの言語系はてなーたちがいた。たくさんいすぎて把握しきれてい…

たまには専門のことを。

音声工学をずっとやってきたはずなのに、最近十件の中に音声が少なかったので、音声のことを書く。音声工学といっても様々な応用分野があり、現在世間に流行しているバイオメトリクスなども古くから研究されていたり、比較的新しいところでは感情認識なども…

Theoretical investigation on the sensitivity of a microphone using the change in the total reflection of light by sound

五年くらい前に東京タワーの近くにある機械振興会館という建物で開催された音響に関する研究会で見かけた発表が、今月の論文誌に掲載されたようである。そのとき私は確か修士の学生で、質問はしなかったが発表後の休憩時間に「滅茶苦茶面白かったです」と話…

モンテカルロ木探索に関する雑感。

先日電気通信大学でコンピュータ将棋とコンピュータ囲碁の講演会が開かれ、その資料がウェブ公開されている(私も行こうと思っていたのだが体調不良で行けなかった)。とりわけ、コンピュータ囲碁のモンテカルロ木探索についてのPDFが非常に分かりやすい。 …

ここに設置していたメールフォームについて。

このブログのサイドバーにメールフォームを設置していましたが、本日自分でテストメールを送ったところ、スパムフィルタにかかってしまいました。これまでも、もしかしたら、スパムフィルタにかかってしまって読み損ねたメールがあるかもしれません。心当た…

当たり前すぎて教えてもらえない研究のこと。

下記二つの記事を読んで、どうにも違和感があった。大学の研究室での研究に関して、何かとんでもない前提のすれ違いがあるのではないかと思えた。この違和感は学生時代にも後輩に対して覚えていたのだけれども、どういった前提が食い違っているのかがどうに…

The Use of Overlapped Sub-Bands in Multi-Band, Multi-SNR, Multi-Path Recognition of Noisy Word Utterances

電子情報通信学会の英論文誌に、私が博士課程のときの後輩(当時修士課程)の論文が出た。The Use of Overlapped Sub-Bands in Multi-Band, Multi-SNR, Multi-Path Recognition of Noisy Word Utterancesである。彼と最も頻繁に最も長い時間ディスカッション…

穴の話。

以前、この日記で穴に興味があるということを書いた。後日、本屋で「穴と境界」という本を見つけた。穴と境界について哲学の存在論の観点から考察した本である。私は存在論についてはほとんど知らなかったのだが、穴についての存在論の考察は工学的なパター…

「大半の疑似科学は技術である」の続き。

まずは謝罪から入ろう。先日書いた私のエントリ(2008-05-11 - IHARA Note)についてトラックバックを送ってくださった三名の方へ。私は全く誤読させるつもりはなかったのですが、私の文章があまりにも分かりづらく、逆方向への誤読をさせてしまったようです…

大半の疑似科学は技術である。

id:dlitさんが疑似科学についてこのように書いている。 この「いつかは証明されるかもしれないでしょ」という言い方は、疑似科学関連のやりとりではよく見かける。 打席に立とうとしない人々 - 誰がログ 私は正確にはサイエンスの人ではなくてエンジニアリン…

天才という言葉からの解放。

天才というのはかなり厄介な単語である。そこから想起される人間像があやふやなのだ。 引用元のエントリには、小学生のときに天才と宣告されて、それゆえに苦しんだという独白が綴られている。このエントリの最後の方に、次のような文が出てくる。 だから僕…

なぜなら科学だから。

先日見た「爆笑問題のニッポンの教養」の感想を書く。2008年3月25日のこの特番の中で、太田は「金星は(金星という星は)生きているかもしれない」という発言をした。もちろん、太田もこれが常識的ではないことくらい分かっている。もしもそういう発…

「あ」の優劣。

このブログ上で何度か書いているが、「完璧な鳥」と私が呼んでいる問題についてあらためて語る。 最初に断っておくが、本日の日記の内容は、科学的に見てかなり危うい議論である。鵜呑みにはせず、そういう考え方をする人もいるのだという程度にとどめておい…

人はなぜ矢倉を組むことができるのだろう。

将来的にはコンピュータ将棋の大会に出たいなと思いつつ、いまひとつのものしか出来ていないのでまだ出ない(まだおそろしく弱い)。ところで、本日の日記のタイトルは、今考えていることである。 今は序盤の定跡に従って駒組みをさせるプログラムが中心だが…

フリーソフトの音声認識エンジンを使ってみたい人のための本。

本の紹介をする。フリーソフトでつくる音声認識システム パターン認識・機械学習の初歩から対話システムまで作者: 荒木雅弘出版社/メーカー: 森北出版発売日: 2007/10/01メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 45人 クリック: 519回この商品を含むブログ (3…

Googleのアドレスと統語法。

唐突にアドレスを書く。http://www.google.com/search?q=IHARA+Note&hl=ja&lr=&start=10&sa=N これはgoogleで「IHARA Note」を検索したときの2ページ目である。こういう少し入り組んだアドレスを見ていると、人間が使っている自然言語にどことなく似ている…

初音ミクなどのVOCALOIDに関するウェブページの訂正とお詫び。

2008年2月8日に初音ミクとかの音声合成のしくみというウェブページをアップロードしました。このページに対しまして、本日(2008年3月26日)、音声合成が専門の方から以下のメールが届きました。ページの誤りを指摘するメールです(全文引用します)。 VOCAL…

妥当性と可能性の接触。

以前、Folk Chomskyology - 誰がログのコメント欄に私は次のようなことを書いた。 本論と関係ないのですが、チョムスキーが(誤解はあるにせよ)有名というのは、ものすごく羨ましいです。チョムスキーがというより、「生成文法」が羨ましいのですが。 私の…

穴と「っ」。

修士のときに友人と「穴」について議論をしたことがある。穴を認識したいとして、一体どのように我々は穴を認識する認識器を設計すればいいだろうという議論である。私は音声について研究をしており、彼は言語獲得について研究をしていた。この穴の認識の問…

博士の就職難が意味すること。

私には関係のない話で恐縮だが、高学歴ワーキングプアに関して思うところを書く(特殊な事情により、この話題には関係がないのだが、そのあたりのことに関しては4月あたりに書くかもしれないし書かないかもしれない)。 企業が博士を採りたがらないというこ…

猫の画像を加工した例と画像処理の初歩の一部、およびそのソースコード。

画像加工の例とその考え方 これまで、「音声認識のしくみ」と「音声合成のしくみ」の簡単な説明ページを作ってきた。第三弾は「画像処理の考え方」である。今回は細かい算数の部分が書きたくて書いた。かけ算と足し算によるフィルタリングがメインである。 …

夢の中の書道の話。

2月23日から2月24日にかけての夢。 昨晩(今朝)見た夢の中で夢の中の私が語っていたことが印象に残っているので、引用する。私が語っていたことのみでは何について語っているのかが分からなくなってしまうので、夢を引用する。 かなり広い和室に親戚…

ヒューマンインタフェースとしての音声認識。

2007年10月、性能ばかりを追い求めていた音声工学者たちが、「音声認識にはユーザが存在するのか?」という根元的な問題について語り合った。情報処理学会の音声言語情報処理研究会である。毎年十月のこの研究会は音声認識の実用面について話し合われ…

「自然な疑問」の作り方。

卒業研究の肝は、正解がない問題(正解を誰も知らない問題)を観察した事実や構築した理論に基づき論じるという点にある。 「自然な疑問」を持たないように訓練されている - 発声練習 卒業論文の指導にあたり、最初の「問い」が立てられない学生について教員が…

初音ミクなどの音声合成のしくみ。

初音ミクという歌声合成ソフトが売り出されてから約半年が経つ。その間、様々な初音ミクに対する言説を見てきたが、社会的・心理的・哲学的な観点からの言及ばかりで、科学的な観点からの言及が少なかったので、科学的な観点から簡単な解説を書いた。絵本を…

学部四年生の一月から三月。

予稿を書き上げ提出し、十二月に失敗した実験を再びおこなった。実験には残響の少ない部屋を選んだ。今度は実験は成功し、まずまずの結果を得ることができた。 そして、一月はそれらの作業とともに、卒論も書いていた。ゼミのレジュメをふざけて英語で書いて…

雑談のススメと恩師。

このブログが始まってから100回目の更新なので、とても個人的なことを書く。学部四年生と修士のときの研究室でお世話になった教授のことだ。 学部四年生のとき、私は音声と画像の研究室に入った。音に興味があり、言語に興味があり、算数がそれなりに好き…